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教育イベント事業 開催レポート

第12回JEES教育セミナー in 仙台
「新学習指導要領 全面実施まであと1年!~授業づくり実践講座~」
を開催しました




NPO法人全国初等教育研究会(JEES)は、第12回JEES教育セミナー in 仙台「新学習指導要領 全面実施まであと1年!~授業づくり実践講座~」を、2019年2月11日(月・祝)に開催いたしました。

今回は、JEES教育セミナーの全国展開第1弾として、昨年大好評だった第11回JEES教育セミナーに引き続き、JEES理事・東北学院大学 佐藤正寿先生にご登壇いただき、新学習指導要領全面実施を間近に控え、子どもたちの「見方・考え方」を育む指導法や「主体的・対話的で深い学び」について、講義と模擬授業、ワークショップを通して解説いただきました。

■講義 新学習指導要領 全面実施まであと1年!
 授業づくりに必要なこと「ここから始める新学習指導要領での授業づくり」

佐藤先生はまず、新学習指導要領のもとでめざす授業づくりについて、文部科学省「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)補足資料」をもとに解説されました。予測困難な時代において、子どもたちが何をできるようになるか、そのために何を学ぶか、どのように学ぶかという観点で改善点が示されたことが新学習指導要領改訂のポイントであることを押さえ、「学習内容の削減は行わない」とされるなかで、教師が一番に考えなくてはならないのは、やはり日常の授業で子どもたちがどのように学ぶかだと話されました。子どもたちの学び方の視点として、“主体的な学び、対話的な学び、深い学び”があり、“資質・能力の三つの柱(知識・技能/思考力・判断力・表現力等/学びに向かう力 人間性等)”を育成していくことが必要になります。そのためにはアクティブ・ラーニングの視点による授業改善と、カリキュラム・マネジメントの充実の2点が重要な方策であると述べられました。この時に重要なのは、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの学習過程の改善であって、アクティブ・ラーニングは特定の指導方法を表す用語ではないことに注意が必要だと述べられました。

その後、主体的な学び、対話的な学び、深い学びという一つ一つの言葉の意味を紐解きながら、具体的な授業づくりにむけて4つのポイントを解説されました。

1)問いを見つける教師のしかけ

単元の導入時に、学習の見通しを持つ活動を丁寧に行うことが必要であり、それによって、問いを子どもが把握したり、予想したり、学習計画を確認することができ、子どもによる問題解決の見通しにつながることを、3年生社会科や、道徳の実践事例を紹介し解説されました。佐藤先生の資料の提示の仕方や、話し合いをさせるタイミングについて、参加者からは納得の声が聞かれました。

2)問題解決の過程を大切にする

文部科学省『高等学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編』の図「探究的な学習における生徒の学習の姿」を示し、図に示された「課題の設定」、「情報の収集」、「整理・分析」、「まとめ・表現」の観点を生かすことが、今後教科の学習においても重要になるだろうとコメントされました。また、ここでは6年生算数の実践事例(クラス内で身近なデータを収集して分析する活動)を挙げ、課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現という学習活動の後、次の課題を見つけ、さらに学びを深めていくというサイクルになっている点をポイントとして指摘されました。

3)見方・考え方を働かせる発問

ここでは昨年11月のセミナーでも紹介された「バスのタイヤの数はいくつですか」という発問(有田和正氏によるもの)や、斎藤茂吉の短歌を見せてどのような発問をするかなど、参加者にも意見を聞きながら説明をされました。その中で発問には拡散的発問(学習課題の明瞭な把握や授業の発展への布石となる)、対置的発問(具体的な思考活動を誘発する)、収斂的発問(授業のスムーズな進展のために理解度を確認する)、示唆的発問(授業の停滞から脱出する)というような分類(沼野一男ほか編『教育の方法と技術』玉川大学出版部より)があり、佐藤先生は担任時代、これを参考に、主に社会で「基本発問」「中心発問」「ゆさぶり発問」の3種類を展開していたとのこと。実際の発問例も交えた説明に会場も引き込まれていました。

4)基盤は学級経営

白松賢氏の書籍『学級経営の教科書』にある学級経営の三領域のうち、教師による計画的な指導・援助である「計画的領域」の指導が、新学習指導要領の学びのベースになると述べられました。例えば学習・生活のきまりごとの習慣化や手順の見える化を学級経営の中でしっかりやっておくことで授業の効率が変わってくるため、教師が4月から根気強く指導することが重要であると話されました。最後に、ヒドゥンカリキュラム(教師が無意識のうちに教え続けてしまっている教育内容)の重要性についても触れられました。ヒドゥンカリキュラムにはプラスとマイナスそれぞれの面があり、マイナスとなる一例として、散らかったままの上靴を放置していると、子どもは「それでいいんだ」と思ってしまうことなどを挙げられました。

※学級経営の三領域…… 問題解決と学級文化の創造する「偶発的領域」、教師による計画的な指導・援助である「計画的領域」、一貫して毅然とした指導をする「必然的領域」

佐藤先生は「子どもたちは教師から学んでいることを常に意識しなければいけない」と言葉を結び講義を終えました。

■体験 「実物投影機と教材の効果的な活用研修の体験」

JEES事務局・教材活用支援員の磯崎より、JEES研修事業のご紹介後、その一部を参加の皆様に体験いただきました。内容としては、教科書や資料集等の教材を活かすICT(実物投影機)活用のポイントとして、5年生社会科の「水産業の変化」を例に、焦点化の4つの基本(MAXズーム、隠す、指さし、書込み)を確認しながら体験いただきました。

■模擬授業 小学校6年生社会科「東京オリンピック」

模擬授業は、11月セミナーでも好評だった「東京オリンピック」。オリンピックが開催されやすい国について資料から考え、東京オリンピックが開かれた時代の状況を理解するというねらいを想定して行われました。「オリンピックについて知っていることは」「どのような国々で開催されたのか」「世界地図を見て気づいたことは」などの発問について、ノートに書く、周りの人と話し合う、発表するなどの活動が次々と展開され、授業はテンポよく進行しました。参加者は講義で触れられていた教師の仕掛けや、見方・考え方を働かせる発問等について、実際に児童の立場で体験しました。

■ワークショップ 「実践講座をふり返り、明日の実践に生かす」

模擬授業後のワークショップでは、参加者同士が学んだことを共有した上で、コメントペーパーや会場からよせられた質問について佐藤先生にご回答いただきました。

■参加された方々の感想

  1. 新学習指導要領でねらっていることをどう授業の中で具体化していくのかのヒントがたくさんありました。
  2. 新学習指導要領の内容、授業づくりのポイント、ICT活用の技など、多様な内容について学ぶことができました。
  3. 具体的な実践の紹介と講義の内容に即した模擬授業が分かりやすかったため
  4. 「主体的・対話的で深い学び」の具体的な姿がイメージできた
  5. 講演だけでなく実際に模擬授業を受けることができ、具体的に学ぶことができた。
  6. 講義だけでなく、模擬授業をして頂いたことでたくさんの授業づくりのヒントをいただくことができた
  7. (児童が)「知りたい」「調べたい」となるしかけのヒントをいただけたから
  8. 今後の授業展開、生徒との関わり方の参考となりました。
  9. 授業づくりの奥深さを改めて痛感させられました。授業改善につなげていきたいと思います。
  10. すぐに子どもたちのために生かしていける内容でした。
  11. あっという間の3時間でした。若い教員にとっても刺激になったようで、声をかけてよかったと思いました。
○開催日時:2019年2月11日(月・祝)13:00~(受付12:30~)
○開催場所:東北学院大学 土樋キャンパス ホーイ記念館 303教室
○定員  :60名
○参加費 :無料
○主催  :特定非営利活動法人 全国初等教育研究会(JEES)
○後援  :文部科学省、宮城県教育委員会、仙台市教育委員会
○協力  :株式会社 教育同人社
http://jees.jp/activity/detail/2019/0211.html